バークリー留学記
1995夏編
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FAQ

 バークリー留学記 by Naoyuki Honzawa
1995夏編

チャールズ河よりボストンを眺める
チャールズ河よりボストンを眺める 丸い建物は野外音楽堂「ハッチシェル」


950611

 金曜の夜は寮に住む日本人留学生5人が集まり、酒を呑みながらトランプで遊んだ。「豚のしっぽ」のようなスピードを要求するゲームでは私は極度に弱い。幼少の時の良くない思い出がよみがえる。慣れない授業では、先生の英語を聞き取るために集中するのでかなり疲れる。でも寮に住んでいるのでホームシックにはなりそうにない。

 土曜はスカラーズというジャズバーで、ロイ・ハーグローヴ(Tpt.)のライヴを観て来た。時間オーバーするぐらいのサービスぶりで、ものすごく感動。ロイ・ハーグローヴは歌も歌っちゃうエンターテイナーなのだ。



950619

 金曜にはケンブリッジはハーバード大学の近くにあるレガッタ・バーで、ジョー・ヘンダーソン(Ten.)のライヴを聴いた。今は亡きアントニオ・カルロス・ジョビンをしのぶボサノヴァばかりで、ベテランらしい落ちついた演奏だった。

 寮には6人の日本人留学生がいるので、アルゼンチン人などが日本語を使って喜んでいるようだ。「こんにちは」(「こ」にアクセント)とよく声をかけられるのが面白い。



コープリー広場のトリニティー教会
コープリー広場のトリニティー教会
950622

 ボストンの有名な観光名所の1つ、トリニティー教会があるコープリー広場にて「ボストングローブ・ジャズフェスティバル」が行われている。ボストングローブとは新聞社の名前だ。昨日はアルトゥール・サンドバルという有名なキューバ出身のトランペッターが、ここでラテンジャズを演奏した。トランペットの音域4オクターブ以上という超人なのに、ショーマンシップ溢れるいいオヤジという感じ。客に最初は簡単で徐々に複雑になるラテンのリズムを手拍子させたり、「ウフーン」とか色っぽい声を言わせたりと、彼のお茶目なところも楽しめた。

 なんと途中2回もメインの電源が切れる、というハプニングがあったのに、生音でもめげずに演奏してくれたのが良かった。ボストンの空を生のサンドバルのトランペットが響き渡った。入場料なしなのにすごいサービス。最後はアンコールに応えてチャチャを演奏、300人以上の観客全員が芝生の上で踊っていた。もちろん私も。それに加えて横のジョンハンコックビルが、各階の電器を下からパパパッとつけたり消したり、まるで大きな光の束が天に昇っていく様な突然の粋な演出が、私達の感動に拍車をかけた。


950701

 友人のDとKと3人で、何の下調べもせずに初めてニューヨークに来てしまった。アムトラックで昼1時ごろペンシルバニア駅にに着いた。なんかニューヨークは危険な街だ、と聞いていたし、実際駅のまわりは雰囲気悪いし、とりあえず日本食レストランに逃げ込んで、うな重を食べながら情報を得ることにした。うな重なのにご飯のおかわりができて、さらにタレまでかけてくれる日本人のおばさんの優しさに、留学2カ月目にして感動してしまう。地下鉄に乗りマンハッタンを南下、フェリーに乗って、自由の女神を見物した。後ろ姿も見た。後ろから見ると、右足の爪先を立てているのが実はかわいいのだ。

 夜はグリニッジ・ビレッジのブルーノートという有名なジャズクラブで、ケニー・バレル(Guit.)のライヴを観たが、これは全くつまらなかった。ただし、ボストングローブ・ジャズフェスティバルで感動してCDまで買っちゃったことのあるカール・アレン(Drums)が参加していて、彼だけは良かったので握手してもらった。


950703

 独立記念日を含む連休中だ。3日目の今日、ほとんど寝て過ごした。昼寝の途中部屋のドアをノックされ、友人に寝ぼけた顔をいきなり写真に撮られたりした。

 昨日はまだニューヨークにいた。10kmぐらい歩いただろう。へとへとになった。Kさんがどうしてもハーレムを見たいというので、地下鉄でセントラル・パークとハーレムの境の駅に降りてみたのだが、あまりの雰囲気の悪さに、結局走ってセントラル・パークに逃げ込んだりした。セントラル・パーク沿いをひたすら歩いて南下して、ジョン・レノンの殺されたというアパートとストロベリー・フィールドのジョン・レノンの記念碑を見た。

 次にジュリアード音楽院のあるリンカーンセンターに行き、私はバーンスタイン・プレースという交差点でたまたま持参していたバーンスタインの本を片手に記念写真。リンカーンセンターの学習環境の良さに、バークリーなんかに来てしまったのは間違いだと思った。そしてカーネギーホールなどを見ながら五番街をずっと南下した。銀座にそっくりの街並みだった。銀座がマネしたに違いない。

 帰りの列車では、自由の女神の中を登って冠まで行くと何が面白いのか、という話題で盛り上がった。ガイドさんが説明していたらきっとこうなるだろう、とKが明るい声で「こちらが陰部です。」と言ったと同時に、偶然車内の照明が真っ暗になる、という瞬間があり、あまりのタイミングの良さに3人で大爆笑。そんなくだらない時間を過ごしているうちにボストンに着いてしまい、タクシーで寮に帰った。そして寮の玄関の警備のオジサンに、自由の女神のポーズをした私達3人の写真を撮ってもらった。旅で浮かれていたからこそこんな恥ずかしいことができたのだ。


950723

 昨晩Dと日本食レストランで飲んだ。日本酒(なぜか熱澗)1本ずつだったのに、2人とも酔っ払って、寮で失態をさらしてひんしゅくを買った。今日の夕方も「おまえ達今日もすでに飲んでるのか?」とスイス人とニュージーランド人に言われてしまう。

 金曜にはプロジェクトバンドで、新しい「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」のアレンジを演奏してもらった。演奏は下手だったが、演奏者全員に褒められて拍手されたりして気持ち良かった。


950725

 ボストンがこんなに暑いとは知らなかった。1週間前位は暑さと寮の飯のまずさでスランプに陥っていたけど、最近は中華料理を食べて元気になっている。ここ1週間で4回も通っている。Kはなんと7日連続で食べているそうだ。本当は寮の食事代も結構バカにならないのだが、食生活はすぐには変えられない、という訳だ。チャーハンがうまい。Dは最近、真のボストニアンになってみせると言って、サングラスを買って街を濶歩しているらしい。


950728

 最近は先輩の日本人留学生達の演奏を聴く機会が多い。まるでバークリー日本人クラブのような日本人ばかりの演奏会になったりする。うまい人と惜しい人がいる。

 昨日はジャッキー・テラソン(Piano)のライヴを聴きに行った。かなり個性的なピアニストで、やってる音楽は難しかったが、Dはかなり気に入っていたようだ。


950731

 昨日、一昨日とまた熱波が襲ってきた。この熱波によってシカゴでは200人の死者が出たらしい。昨日はインド料理のカシミヤにカレーを食いに行った以外ほとんど部屋で寝ていた。この変態のような暑さを何とかして欲しい。

 最近バークリーの日本人留学生の数が5倍くらいに増えた。外国人向けの英語のプログラムと5 Weeksの特別プログラムのせいだ。私はあまり話しかけないので中国人と思われているかも知れない。

 今日は暑さに負けまいと思って7時頃起きた。ずっとアレンジに専念している。前に作った「ホット・エアー」をアレンジして来年お披露目するつもり。リディアンモードを使い官能的で個性的にアレンジしている。


950805

 昨日6年間使ってきたプラチナ製の桜の木の万年筆がこわれた。少しショック。

 3日の夜、スカラーズにケニー・ギャレット(Alto)のライヴを聴きに行った。日本でどんないい思いしてきたのか知らないが、こいつは妙に日本人女性びいきの人で、一緒に聴きに行った女性達がナンパされそうになって、なかなか帰れなくなり実にイライラした。ナンパされた女性も女性で、帰りたいのか付いて行きたいのかハッキリしろ。

 でもケニー・ギャレットは、バークリーではかなり人気のある若手サックス奏者なのだ。



950807

 昨日はボストンからバスで3時間半の、ボストンシンフォニーの夏の拠点タングルウッドで、小澤征爾指揮BSOのマーラーの第2交響曲を聴いてきた。すごい迫力で、4楽章の合唱が入る直前の盛り上がりの所で、それまでずっと座っていた合唱団員が指揮者の合図でパッと立ち上がるという粋な演出が感動に拍車をかけた。素晴らしかった。が、何と言っても曲が長い。帰りの最終のバス(5:50pm)に乗り遅れそうだったので、最後の方は「早く終わってくれよ、お願いだから。」という気分だった。

 結局バスには乗り遅れて、タクシーを呼んだのだが来てくれず、まるで秋のような冷たい山の風が吹く中、1時間位ゲートの前であたふたしていた。ここで野宿をしたら明日の朝凍死しているよ、などと不安になりながら。やっと来たタクシーで2時間近くの隣町スプリングフィールドまで行って、そこからバスで帰ることが出来た。着いたのは夜中の2時。こんな田舎で死にたくないと思ったが、あたふたしていたとき、車に乗っていた小澤征爾が手を振ってくれたのがうれしかった。


950819

 夏のセメスターが終わり、寮を追い出されて一時的に友人のアパートに置いてもらっている。家主のTさんも実は9月1日まで一時的にここを借りていて、さらに彼はニューヨークに旅立っているので、数日間スペイン人のセルジオと2人で住むことになるのだ。どきどきわくわく。今3人分のすごい量の荷物に囲まれて1人でいる。


950822

 初めてボストン美術館を訪れる。アメリカとヨーロッパの現代からルネサンスまで見た。桃やメロンの静物画など、前に横浜そごう美術館のボストン美術館展で見たものがあり懐かしい。印象派が充実していて、モネ、ルノアール、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソなど、実際に見ると鳥肌が立つのだ。


950831

 不動産に行って新しいアパートの鍵をもらってきた。明日が引っ越しだ。ヴィブラフォンを購入するために、フィラデルフィアの楽器店に電話をした。中途半端な居候生活は今日で最後だ。そういえば、旅行する前にSの家に居候しているはずのDに連絡が付かないと思ったら、Nさんとシェラトンホテルに泊まっていたらしい。ボストンの夏も終わりに近づくが、僕の知らないところにロマンスがあったのだった。


1995秋編

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