バークリー留学記
1995夏編
1995秋編
1996春編
1996夏編
1996秋編
1997春編
FAQ

 バークリー留学記  by Naoyuki Honzawa

1996春編

チャールズ河よりボストンを眺める
ナンシー・ツェルツマン(マリンビスト)、と私


960116

 約25日間の正月帰省の後、成田空港からボストンへと向かった。シカゴ乗り換え。ワインと夕食を食べた後寝ようとしたが、あまり眠れない。今回はエコノミークラスの一番前の席で、足が完全に伸ばせて、ビジネスクラスのように快適だ。ただ、一番前なのでスクリーンが見えず、代わりに据え付けてある液晶の小さな画面は、斜めから見ると白黒反転していて、映画どころじゃなかった。

 シカゴの天候は悪く、驚いたことに雲を抜けたら直ぐに地上だった。視界が開けたと同時にドンと着陸したわけで、視界がなくても着陸可能なのだろうか、という疑問がわいてきた。パイロットをしている兄にでも聞いてみよう。


960119

 まだかなりの時差ボケで、昨日の午後5時間も昼寝をしてしまい、さらに10時にくたばって寝てしまい、今朝は6時半に起きた。17日にレジストレーションがあって以来行事が全くないので、意志が弱いのと相まって、こんなことになっている。来週の月火と、大雪で延期になった昨年の期末試験の残りがあるので、ヴィブラフォンの練習を再開しなければ。


960123

 チックコリアの音楽について英文4ページのエッセイを書いている。

 昨日の午前中は頑張った。午前9時半からのオーディションのために7時に起き、8時〜9時にウォーミングアップをし、9時10分に会場に行き、そこにヴィブラフォンがあることを確認し、トイレに行ったら、楽器がなくなっていたのだ。その楽器は別の部屋のオーディションで同じ時間に使われることが判明、学校中他の楽器を探し歩いたのだが、いつもなら4〜5台ある楽器が今日に限ってその1つしかない。仕方なく先生に断って、別の部屋のが終わってから空いている時間にやらせてもらった。結果は今日出ると思うが、緊張しまくりで全然ダメだった。ほんと疲れた。寝る。


960125

 初めてのデイブ・サミュエルズ(ヴィブラフォン)のレッスンだった。話好きで、必ずいつもコーラのMサイズを持ち歩く、典型的なアメリカ人。練習の仕方や、精神的なところまで教えてくれる。いい先生だ。

 指揮法の授業では、早速4拍子をクラスメイトと向かい合って練習。今さらながらかなり恥ずかしい練習だ。タクトも購入。こちらではバトンという。


960126 Fri

 スペースシャトル・チャレンジャーが飛んだのか、数年前のあの爆発事故について、あれは国民的損失だった、とラジオで言っている。それとも今日が事故の日なのか。詳しいことは私の英語力では分からない。

 昨晩久しぶりに小澤征爾指揮のBSOを聴いた。23日のマーラーの第10交響曲のときはサイモン・ラトル指揮だったから。ラトルは風刺画の人物のような風貌で腕がやたらと長い。ベートーベンの第4交響曲は完璧。ブラボーだった。しかしR. シュトラウスの「アルプス交響曲」がすごかった。曲はそんなに好きではないが、マーラーの2番のように、少なくとも生演奏では効果的な曲だ。

 前半の演奏の途中でトロンボーン奏者2人、ホルン奏者4人が退場を始めたと思ったら、小澤が突然回れ右をして、突然上手の舞台裏からファンファーレが聴こえた。客の反応が面白い。少し笑いが起こるのだ。多分、素直な驚きとおかしさと、一種の感動が笑いを誘うのだろう。またパーカッションの1人が退場したかと思ったら、牧場のカウベルを鳴らしたり、嵐の場面でせっせとウィンドマシンを回したり、たった一発だけのために備え付けた、ばかでかい長いスチール板を思いきり揺らして音を出すサンダーマシンが、あまり聴こえなかったり。しかし終わってから、隣のおばさんは「Amazing!!」と感動していた。なかなか見ることの出来ないいい経験だった。


960127 Sat

 昨日CDや本を沢山買ってしまった。プーランクの室内楽集を、アンサンブル・ウイーン・ベルリンとジェームズ・レバイン(Piano)のもので。レバインはピアニストだとは知らなかった。ドイチェ・グラモフォンは常にいいCDだなあ、とブーレーズ関係を集めてこう思っていたのだが、ガーディナー指揮のラフマニノフの「シンフォニックダンス」とヤナーチェクの「タラス・ブーリバ」のCDは、全然ダメだった。2度と聴かないかも知れない。こんなCDをよく出すものだ。中古CD屋行きだな、あれは。あとハイティンクのベートーベン交響曲全集。これは結構いいみたいだ。

 一昨日BSOを観て思ったが、こちらは地域とその交響楽団が結びついていて、今回の私のようにシーズン券を買って毎年観に来ている年輩の人が多いし、これからそうしそうな若い人も少なくない。シカゴ空港に降りたときも、「シカゴ交響楽団・バレンボイム・ショルティ・ブーレーズ」と書かれたポスターがあちこちに貼ってあった。都市に美術館と交響楽団あり、という感じ。日本もこうなったらいいのになあ。日本の各都市とはかなり様相が違うような気がする。


960201 Thurs

 昨日は指揮法の授業。先生がうまくまとめるため、和気あいあいとしていていい。私も皆の前で指揮をさせられて、良くない点を指摘されたりした。4拍目に皆が入るのに、4拍目に私がブレスをしたのがおかしくて、指揮をしながら思わず笑った。

 向かいのユースホステルのハト達は、夕陽の当たる場所に集まっている。一番太っていて白いハトは、いつも威張っている。いじめっ子だ。


960203 Sat

 チャーハンを作って、部屋を掃除した。トワイニングのオレンジペコを飲んでいる。しかし昨日ルームメイト達は、100袋入り2箱でお買い得の得体の知れない紅茶を買ってきた。彼らは分かっていない。共同生活も細かい点がやりにくいな。彼らは全く掃除しないし、ゴミも捨てない。洗い物をしても鍋の蓋は洗わない。最も、私は常に自分のやり方を押し通そうとするのだから、仕方ないかも知れない。

 木曜の夕方6時からのナンシー・ツェルツマンのマリンバ・ラボは、意外だった。クラスメートが2人しかいないのに、今セメ末にリサイタルをやるのが目的なのだそうだ。3人の中でなぜか私だけ初見が出来て、3曲も任されてしまった。忙しくなるのが心配だ。


960205 Mon

 このところ毎日寒く、日中でも-5〜-10度位の日が多い。日本でも寒波が来たと聞いたが、こちらと日本の天候はまるで連動しているかの様である。寒波は偏西風の蛇行した所に出来るのだから、ただの偶然だろうけど。

 今年は記録が多いらしく、フロリダで霜が降りてパイナップルが凍ったそうだ。ニュージーランド沖で巨大なイカが取れたが、これはフランスの核実験の影響と考えられる、とかラジオで言っていたが、あれは冗談だったのかも知れない。英語のジョークはわからん。


960210 Sat

 DとNの2人の誕生日は続いているので、昨日誕生パーティーをまとめてやった。白ワインを飲みながら自家製のムニエルを食べて、2人がボストン一お洒落だと言われるニューベリー通りで買ってきたイチゴのチーズケーキに、2人の年の数を足した47本のローソクを立てて、2人で消してもらった。すぐに消えた。しかし47本のローソクの明るさには驚いた。

 今までアメリカには、安いスーパーによくある原色系のデコレーションの全然おいしくないケーキしか存在しないんだ、と思い込んでいたが、今回のケーキは、イチゴがとけ込むチーズケーキの上に生クリームとイチゴがのっている、それはそれはおいしいものだった。少しだけアメリカの食文化を見直した。


960215 Thurs

 バレンタインデーにNさんから義理チョコをもらったので、私もこのところ甘い生活にひたっている。昨日はデイヴ・サミュエルズの2度目のレッスンだった。彼は何かいい感じで、見本を見せようとインプロヴィゼーションをやり始めたら、気分がのってきたのか止まらずに3コーラス位1人で叩いてしまうのだ。しまいには声まで出して、顔をくしゃっとして、たまに「どうだ!」という感じでこっちを見るのが良い。目の前でこんな見本が見られるなんて大変勉強になる。

 アーロン・コープランドの80歳の誕生日コンサートのヴィデオを見た。コープランドはすごい鷲鼻で指揮が下手。バーンスタインも振っていたがやはり格段に上手い。でも彼もすごいビール腹だった。晩年の札幌のPMFで腹が出ていたのは、癌のせいではきっとないだろう。


960217 Sat

 最近はマリンバの先生ナンシー・ツェルツマンの影響でパーカッションアンサンブルにハマっている。フィラデルフィアの打楽器専門店の通信販売で、マリンバの安倍圭子氏と我が師であるデイヴ・サミュエルズが日本でやったコンサートのCDを手に入れた。あの6本マレットの安倍圭子とデュオをやるなんてデイヴも大したものだ。他に安倍圭子のソロ、サフリ・デュオ、ネクサス、ジャズのデヴィッド・フリードマン、そしてナンシーのヴァイオリニストとのデュオであるマリモリン、を手に入れた。


960219 Mon

 昨日は7時間半も練習した。学校で3時間マリンバを練習して腕が痛くなった。5オクターブのマリンバは幅が身長ほどに広いので、体全体を使ういい運動だ。しかも一番左のマレットを多用するため、4本独立させる練習になる。ヴィブラフォンだけでは気付かなかっただろう。トレモロが難しい。

 アメリカ人の味覚を一番疑ったのは、スターマーケットでルームメイトの買ってきたマシュマロケーキを食べたときのことだ。買うときは何かうまそうだったんだって。25センチ位の紙皿の上に、レモンのジャムのようなものをベースに大きい肉まん型にただマシュマロを積み上げただけ。かろうじて表面にクリームが塗ってあった。夕食後に1/6を3人で食べて以来、彼らは全く手を付けなかった。責任取れよな、と思いながらもその後1/4を食べてみたが死にそうになった。大きくて丸ければいいてもんじゃないよ、全く。


960222 Thurs

 昨日は雨降り、今日は曇り。何か春の予感がする。もう一回くらい寒波が来てからかも知れない。

 20日は「ベスト・オブ・ジャズ・コンポジション」のコンサートで、自作の「ローズベイ」を演奏してもらった。しかし実に間が抜けた演奏。リハーサルではほとんど意見を言えなかったし、もし自分がもっと上手かったら演奏に参加できただろうし、すべてに関してストレスが溜まる出来事だった。晴れの舞台のはずが...。


960227 Sat

 ルームメイトのBとバスルームでバリカン髪刈り大会をしたので、私の髪の長さは2.5センチ均一になってしまった。ちょっと練習とか勉強とか生活とかを改めるきっかけが欲しかったのだ。

 今日のボストンは強い風。ひょっとしたらこれは春一番なのではないかと思った。日中10度位に上がった。春一番は英語では`Spring-heralding storm`と言うらしい。


960304 Mon

 ドビュッシーの「海」と「夜想曲」をスコアを見ながら聴いてひどく感動した。一週間前に武満徹が癌で亡くなりショックを受けた。彼はかなりドビュッシーよりの作曲家だし、最近「牧神の午後」のオマージュだと言われる曲を発表したばかりだった。

 話はごろんと変わって、テレビで日本が舞台の昔の「007」を見て笑った。丹波哲郎がかなり重要な役で出ていた。例によってジェームズ・ボンドはモテモテで、日本女性も例外ではなかった。設定がまた傑作で、瀬戸内海の島にカルデラ湖のような火口があって、その中が実は宇宙ステーション(多分ソ連の)になっていて、それが原因で危うく戦争になるところを日本人に変装したジェームズ・ボンドが救う、という無茶苦茶なものだった。もちろん忍者も登場、ジェームズ自身も姫路城の前で修行して、間もなく立派に闘ってしまう、という話だった。アメリカの日本物の割には良く出来ていたとも言える。


960314 Thurs

 デイヴ・サミュエルズのレッスンでは、来る度に上達していると言われ、とても嬉しい。彼もとてもヴァイブが上手い。ゲイリー・バートンは超人的な速さだから、ときどき歌心がなくなって聴こえるが、デイヴの場合はある。とてもブルージーなフレーズとかを、まるでピアニストのように叩く。このレッスンがバークリー最大の収穫じゃないか、なんて今は思う。

 ボストン交響楽団はアンドレ・プレヴィンの指揮で、モーツァルトのディヴェルティメントとヴァイオリン協奏曲、ベートーベンの第14番弦楽四重奏曲の弦楽オーケストラ版を聴いた。小編成のとてもかわいらしいコンサート。オープンリハーサルなので、また3階のバルコニーから身を乗り出すように見た。上からだったので、プレヴィンは頭の中央が禿げているのがとても気になった。


960316 Sat

 昨日午後4時から11時まで連続してヴィデオを見た。それは去年NHKでやったドラマ「大地の子」で、正月に親に薦められて2話分ぐらい見たことはあった。妙なことにうちの親と同じように泣くほど感動していたのが、ルームメイトのDファミリーで、Dは原作も読んで涙したのだそうだ。昨日も最初の1話を一緒に見ていたが、途中で「ああもう駄目だ...」とか言って鼻をかみに行ったりしていた。奴は結構涙もろい。


960320 Wed

 昨日4時間かけて「大地の子」を見終えた。最後は、日中共同プロジェクトの製鉄所が上海に完成し、父と子のそれぞれの任務が無事遂行される。その後、2人で2泊3日の長江下りの旅に出かける。船上で父は息子に日本に帰って来て欲しい、と言うが、旅の最終日に、長江の雄大な景色を眺めながら、「私はこの中国の大地の子なんです。」と父の願いを拒む。長い話だったが、実に良く出来ていて、泣かされずにはいられなかった。これはまるで人を泣かせるプログラムが随所随所に散りばめられていて、これを見て自然に泣かないのは人間じゃないのかも知れない、なんて意地悪にもそう思ってしまうようなドラマだった。

 見終わったのが午後3時半で、シャワーを浴びながら号泣したくなったが、4時からアパートでセッションをする予定の友人が、見終わった直後に早く来たので、残念ながら出来なかった。「号泣シャワー」という言葉が友人にはうけた。


960407

 金曜のマリンバコンサートのリハーサルの後、1140 Boylstonから150 Mass. Ave.までの約200メートルの道を、憧れのナンシーと2人きりで歩くことに成功した。ボストンの街角を。絵になるなあ。

 学会でサンフランシスコに来ていた友人から、かつて1人しか脱獄出来なかったという有名なアルカトラツという島の旧連邦刑務所のカードが届いた。牢屋の中に、肌もあらわな、ほとんど水着のような囚人服を着けた2人のグラマーな女性が、鍵を持つ牢屋の番人を誘惑して脱獄しようとしている、という写真である。今ではジョークも通じる観光名所になってしまっているようだ。


960410

 今頃になってひどいストームが訪れた。強風、5センチの積雪。気温は0度前後。天気予報によると、ボストンの今年の降雪量は記録的らしい。

 昨日は雨の中BSOを聴きに行った。モーツァルトの「インプレサリオ」、ブロッホのヴァイオリン協奏曲、そしてブラームスの第3交響曲。ブロッホの曲は初めてだったが、いかにもヴァイオリン協奏曲。指揮は久しぶりに小澤征爾で、ヴァイオリンはなんと諏訪内晶子だった。彼女はBSOと初共演らしい。

 彼女が鮮やかな赤のドレスで登場したとき、客席が「おーっ!」とどよめいたのを覚えている。それほど美しかったのだ。演奏も実に素晴らしく、ソロの合間に何度も何度もチューニングし直すほどの気の使いよう。終了後客は総立ち、初共演は大成功だったようだ。

 それに比べてブラームスはピンと来ない。帰りを急ぐ客も多かった。ボストンの演奏会では、帰りを急ぐか、総立ちになるかどちらかなのか。


960413

 ストームが去ってから暖かい日が続いている。CNNのニュースの合間に、東京の満開の桜と花見客が盛り上がって(歌って踊って)いるシーンが映った。花見客はいらないが、桜を見てなんかジーンとした。今年は見られないんだなと思うからだ。日本の象徴と再認識。

 ボストンでは明後日ペイトリオッツデー(愛国者の日)に100回記念のボストンマラソンが行われる。すぐ近くを通るので見に行くかも知れない。


960416

 雨降りで少し肌寒い。昨日のボストンマラソンは見に行けなかったが、外はなんか騒がしかった。アメリカ得意の、飛行機の後ろに大きな大段幕を付けて地上の人に宣伝するのが、何度も空を飛び回った。食品会社の飛行船もしつこく飛び交っていた。

 今ラジオで去年のオクラハマシティの爆発事件の瞬間の録音を聴いた。すごい音でショッキングだ。毎朝耳を慣らすために聴く「トークステーション」では、今日はその事件が話題らしい。アパートの窓から見える、コープリー広場に立つジョン・ハンコック・タワーの半分から上が雲に隠れているので、今日はなかなかひどい天気らしい。


960417

 ハイティンク指揮のBSOのオープンリハーサルで、ラヴェルの「道化師の朝の歌」「クープランの墓」、ストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲、そしてR. シュトラウスの「死と浄化」の4曲を聴いてきた。私は小澤征爾よりもハイティンクの指揮が好きだ。

 「道化師の朝の歌」は泣きそうなくらい感動した。ラヴェルの作曲の素晴らしさが最も良く現れている曲の一つだと思う。最後のクライマックス、ティンパニーが轟き、フォルテッシモの最終音では、勢いのあまり指揮者は真横を向いた。それはライヴならではの熱が入った演奏、しかも精緻なラヴェルの音符の一つ一つが無駄にされていなかった。

 「クープランの墓」は木管のソロが多いのだが、特にオーボエの太ったオヤジがあぶなかった。後でハイティンクから注意を受けていたようだった。でも「メヌエット」や「フォルラーヌ」が美しい。ストラヴィンスキーは初めて聴いたが実に興味深い。ひつこいほど登場するヴァイオリンの11度のダブルストップが新鮮だった。

 「死と浄化」も感動した。浄化のテーマは、J. ウィリアムズ作曲の映画「スーパーマン」の「愛のテーマ」と酷似している。「ドレミミレー」が「ドミソミレー」(太字はオクターヴ上)に変わっただけで、メロディの輪郭と和声付けはまるでそっくりなのである。J. ウィリアムズもやる男だ。

 終わってから、ティンパニのヴィック・ファースとハイティンクが楽しそうに会話していた。ヴィック・ファースは、日本でもお馴染みのドラムスティックのブランドにもなっているすごい人物だ。


960425 Thurs

 ラヴェルの「ダフニスとクロエ」の最後の部分は何か不自然だ。なんでこんなにも派手でなくてはいけないのか。私はドビュッシーが「自然主義者」だったらラヴェルは「建築家」だという印象を持っている。

 指揮の授業でJ. ウィリアムズの「シンドラーのリスト」のスコアと音楽に触れた。ヴァイオリン独奏の部分。これは自筆の楽譜なのか、という質問に対して、多分彼はメロディだけをサラリと書いて、オーケストレーションは弟子がやったんだろう、と先生が言っていた。先生自身は、曲には詳しいが、ホロコーストの映画は見たくないので、見ていないそうだ。何か重いものを感じた。


960503 Fri

 マリンバ・コンサートが無事成功した。リサイタル・ホールが取れなかったので、普通の教室に部屋の半分位を占めるマリンバ4台を置いて、意外に多かった客には狭いのを我慢してもらった。ナンシーも「Crowds!」とか言って客の多さに驚いていた。ヴィブラフォンを使うHさんとのデュオでは、四角に置かれたマリンバに囲まれた真ん中で叩いた。2曲はマリンバ4重奏なので、Hさんが客に尻を向ける犠牲になった。かわいそうに。

 ナンシーのMCがまたいい感じで、最後のダニエル・レヴィタンの「マリンバ4重奏曲」が練習不足だったので、「この曲はとても難しく、私達はまだ通して演奏したことが一度もないのです。これは一つの実験なのです。」と言ってみんなの笑いを誘ったりした。直前にも自分たち演奏者を励ますように、「Good luck everybody!」。何度も危なかったが、ナンシーのおかげで最後まで通すことが出来た。

なお、当サイトへのリンクされる場合はなるべく、 http://studiocranberry.com/ (トップページ)のURLにお願いします

企画・制作:本澤なおゆき
1997-2001 studio cranberry... All right reserved.